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ナルセブログBlog

薬でできること、できないこと

歯が痛くなると、「とりあえず薬だけ出してほしい」「○○ください」と言われることがあります。
気持ちはよくわかります。
しかし、歯科は“薬だけでは解決しない”ことがとても多いのです。

内服薬が得意なのは、細菌や炎症、痛みをコントロールすることです。

例えば、親知らずの周囲が大きく腫れて発熱しているとき、
顎の骨にまで炎症が広がっているとき、
全身疾患があって感染リスクが高いときなどには、抗菌薬は体を守るための重要な武器になります。
また、抜歯やインプラント後の痛みには鎮痛薬がよく効きますし、
帯状疱疹やヘルペス性口内炎には通常の口内炎の薬ではなく抗ウイルス薬が有効です。

一方で、壊れてしまった歯そのものを元に戻す力は、薬にはありません。

むし歯は細菌が原因ですが、溶けたエナメル質や象牙質は、どんなに抗菌薬を飲んでも再生しません。
髄炎や根尖性歯周炎で神経や根の先に膿がたまっている場合も同じで
薬で腫れや痛みは一時的に引いても、歯の中の感染源は残ったままです。
時間が経つと、より強い痛みや大きな腫れとして再発してしまいます。

歯周病も同様です。原因は歯ぐきの中にこびりついた歯石とバイオフィルムで、
これは実際に器具で取り除くしかありません。

抗菌薬を併用することはあっても、それはあくまで補助的で、
内服薬だけでは、失われた骨も、深くなった歯周ポケットも元には戻ることは、極めて困難です。

わかりやすくたとえると、薬は「火事の炎と煙を一時的に弱める道具」です。
けれども、燃えているゴミそのもの(むし歯・歯石・悪いかみ合わせ)を片付けなければ、火事は何度でもぶり返します。

「薬でごまかす」のではなく、
薬=体を守るサポート役
処置=原因を取り除き、根本的に改善するもの

とセットで考えることが、結果的に一番ラクで、安全で、経済的だったりします。

「とりあえず薬だけ」ではなく、「なぜ痛いのか」「何を治さないといけないのか」を、一緒に確認していきましょう。薬とうまく付き合えば、歯科治療はもっとラクに、安心して受けられます。


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