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ナルセブログBlog

地域とつながるコメンサリティーのかたち

これまでのコラムでは、コメンサリティー(共食)という考え方をもとに、
「誰と食べるか」「食卓で交わされる会話」「食事の最中に感じる快適さ」が、どれほど心と健康に影響するかをお話ししてきました。

今回は、その視点を少し広げて、地域のなかで共食を支える歯科医療の役割について考えてみたいと思います。



日々の診療の中で、特に高齢の方やひとり住まいの方にとって、食事が「ひとりで済ませるもの」になっている現実を感じることがあります。
訪問診療でお宅に伺うと、整えられた食卓に、いつものおかずが静かに並び、テレビの音を聞きながらゆっくりと食事をされている
そんな穏やかな中にも、少し寂しさがにじむような光景に出会うことがあります。

ひとりの食事が続くと、栄養が偏ったり、食欲が落ちたり、心の元気を保つのが難しくなることもあります。
だからこそ、ほんの少しでも「一緒に食べる時間」を取り戻していただくお手伝いができれば、と感じています。


最近では、地域の中で、子ども食堂や食事イベントなど「一緒に食べる場」をつくる取り組みが少しずつ増えています。
そうした場に足を運ぶ患者さまのお話を伺っていると、歯科の立場からも、「食べる力を支える」ことでその時間をより楽しく、安心して過ごしていただけるお手伝いができるのではないか、と感じます。
直接的に場を用意することはできなくても、歯や口の健康を守ることが、地域のつながりを守る一助になるのだと思っています。

歯科が担うのは、単なる虫歯治療や入れ歯作りだけではありません。
患者さま一人ひとりが、食卓で「美味しいね」と笑い合えるようにすること。
その笑顔が、家族や地域とのつながりを生むこと。
それが、私たちの仕事の本質だと感じます。

「食べることを守る」=歯を守る、心を守る。

そんな気持ちで、これからも患者さま一人ひとりと向き合いながら、地域全体の食卓を守る歯科医療を目指していきたいと思います。


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