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ナルセブログBlog

やわらかい心と、やわらかい食事

もう梅雨明けだそうですね。しかし、
突発的な豪雨が目立つようになり、暑さ対策もですが、水害にも注意したいものです。

このコラムではこれまで、「誰と食べるか」「食卓で交わされる会話」といったコメンサリティーの大切さについてお話ししてきました。
今回は、その食卓をより深く楽しむためのもう一つの要素「食べることの快適さ」について考えてみたいと思います。



診療の中でよく感じるのは、食事中に感じる違和感や噛みにくさ、飲み込みにくさが、思った以上に患者さんの楽しい体験を制限しているということです。
「食べている最中に疲れてしまう」「会話の途中でうまく噛めない」「外では思うように食べられない」
そうした声は、決して珍しくありません。
疲れるから、「もういいや」から始まると「もう好きじゃない」というとこになり、自身の「好み」まで左右しかねないということですね。

コメンサリティー(誰かと共に食べる事)は、単に一緒にテーブルを囲むことではなく、食べることそのものが“心地よい”と感じられることがあってこそ成立します。
だからこそ、歯科治療は“噛める”ことをゴールにするのではなく、「楽しく・自然に・無理なく」食べられる状態を目指すべきだと、私は思っています。

そのための方法は一つではありません。
最近ではインプラントを希望される方も増えていますが、
インプラントだけが最良の選択肢ではないということを、私は強調したいです。

入れ歯には、その方のライフスタイルや咀嚼のリズムにぴったり合う可能性がありますし、
実際に、「これなら快適に食べられる」と笑顔で使っていただけるケースも少なくありません。

(こちらに関しては過去のコラムでも触れていますね)

私たちが大切にしているのは、何を使うか”ではなく、“どう食べられるか”です。
どのような治療法を選んだとしても、患者さんが自分の暮らしの中で「これでいい」「これがちょうどいい」と思えることが、何より重要だと考えています。


そして、その「ちょうどよさ」に出会うには、ご自身と、専門家が継続して管理していくということがとても大切です。
口の中は日々変化しますし、一回の治療や短期間の治療で完璧な形をつくることは難しいものです。
定期的に調整を重ねるなかで、治療は“患者さんと一緒につくっていくもの”になります。

治療は、ただ壊れたところを治すためのものではなく、
「これからも食べられる未来」を一緒に考える営みだと、私は思っています。

歯があることだけがゴールではありません。
誰かと、楽しく、無理なく、美味しく食べられることが私たちの目指すところです。

これが意外と難しいんですよね・・・・。


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